「うちの子、何かスポーツを習わせた方がいいのかな?」
そう考えたことのある保護者は多いでしょう。サッカー、水泳、体操…選択肢は豊富です。しかし最新の運動発達研究は、少し意外な事実を示しています。
幼少期に最も重要なのは“競技練習”ではなく、“自由度の高い多様な遊び”である。
この考え方を体系化したのが、ドイツ発の運動教育プログラム「バルシューレ(Ballschule)」 です。
バルシューレとは何か?年齢と目的を一言で
バルシューレは、神経発達の“ゴールデンエイジ”である4〜10歳に(運営団体によってレンジの差があります)、競技ではなく遊びを通じて運動の土台を築く科学的な運動教育プログラムです。
幼児期〜小学校低学年は、神経系の発達が著しく、動きの習得能力が非常に高い時期。この時期に多様な動きを経験することが、一生の運動能力の基礎になります。
バルシューレの理念
「教え込まない」ことが才能を伸ばす
バルシューレはドイツ語で「Ballschule(バルシューレ)」と書き、直訳すると「ボールの学校」を意味します。
しかし、サッカーやテニスの技術を教え込む場所ではありません。
目的はただ一つ。
オールラウンドな運動能力の育成
子どもが
「自分で考え」、「自分で試し」、「遊びの中で体を学ぶ」
ことを重視します。
このアプローチは、子どもの運動発達研究を長年続けてきた東京学芸大学名誉教授・杉原隆氏の知見とも一致しています。
なぜ「自由な遊び」が運動能力を伸ばすのか
● 種目指導より自由遊びの方が運動能力を伸ばす
杉原氏の研究では、決められた種目を教える園より、自由に遊ばせている園の子どもの方が、運動能力テストの結果が高い傾向が確認されています。
理由はシンプルです。
自由遊びの方が「運動のバリエーション」が圧倒的に多いから。
● 指導型環境では「動いていない時間」が増える
先生の説明、順番待ち、指示待ち…。
これらは「運動時間」を減らしてしまいます。
一方、遊び中心の環境では、
✔ 常に体を動かす
✔ 状況に応じて動きを変える
✔ 判断しながら動く
という「脳と体を同時に使う活動」が自然に増えます。
● 幼児期に重要なのは「動きの種類」
幼児期は同じ動作の反復ではなく、
✔ 走る
✔ 投げる
✔ くぐる
✔ 転がる
✔ 回る
✔ 避ける
といった多様な運動パターンの経験が重要です。
これは運動神経の土台となる「運動コントロール能力」 の発達に直結します。
● 「遊び志向」は将来の運動好きにつながる
勝敗や成績を重視する「成績志向」よりも、
「やってみたい!」という内発的動機づけ(遊び志向)
の方が有能感を高め、運動継続率も高くなります。これはスポーツ心理学の自己決定理論とも一致します。
バルシューレで体験すること
バルシューレには、子どもを飽きさせない120種類以上のゲーム形式があります。
① 多様なボール体験
大きさ・形・弾み方の異なるボールを使い、
「投げる」「蹴る」だけでなく「捕る」「運ぶ」「止める」「避ける」
といった基礎動作を網羅。
② 自分で考えるゲーム展開
「どうすれば相手をかわせる?」
「どうすれば仲間と協力できる?」
子ども同士の相談・工夫が前提の環境。
③ 社会性も同時に育つ
集団遊びはコミュニケーション能力を高め、運動能力向上とも関係があります。
10歳までの遊びが一生の武器になる
運動能力の土台が形成される重要な時期は10歳頃まで。
この時期に必要なのは、
❌ 競技特化の早期専門化
ではなく
✅ 多様な動きを経験する遊び
です。
「運動が楽しい」、「体を動かすのが好き」
という感覚が、生涯スポーツにつながる最強の基礎になります。
結論:バルシューレは“遊びの科学”の実践形
バルシューレは単なるボール遊びではありません。
✔ 運動発達研究
✔ 運動心理学
✔ 運動コントロール理論
に基づいた、科学的に設計された自由遊び環境であり、特定競技の早期育成ではなく、生涯にわたって運動を楽しむための“土台づくり”を目的とした運動教育です。
参考文献・関連リンク
本記事は、子どもの運動発達研究およびバルシューレの理念に基づいて構成しています。
■ 運動発達・自由遊びの科学的知見
・杉原隆氏インタビュー「あそびでアップ!運動能力」(Recrew 2013 May号)
・スポーツで生き生き子育て&親育ち 藤後悦子、井梅由美子、大橋恵著(福村出版)■ バルシューレ(Ballschule)について
- Ballschule Heidelberg(ドイツ本部)
バルシューレの理論的背景とプログラムの原点- NPO法人バルシューレジャパン
日本国内でのプログラム展開や指導者育成情報
コメント